成績向上へのノートをつくる日々、そして成長−『ハッピーノート』

ハッピーノート (福音館創作童話シリーズ)

ハッピーノート (福音館創作童話シリーズ)

 進学塾に通う女の子が主人公の小説です。塾で気になる男の子と交換し合うノートを「ハッピーノート」と名づける場面があります。これは、成績向上を目指した問題を綴ったものでいわゆる交換日記ではないのですが、主人公の女の子がドキドキする気持ちも十分にわかります。
 主人公の聡子は、学校のクラスメイトの間で少し息苦しさを感じています。仲良しグループ系の悩みは、女の子を描いた小説にはよくある設定です。塾に通う目的は、学校の仲良しグループという一定の「世間」と違う気分になれる場所が欲しかったためです。しかしながら、塾でも友だちにうまく接することができない場面もあって、悩みはより複雑化していきます。悩む原因は、聡子が言いたいことをはっきり言葉にできない性格にありました。様々な体験や人との接触を経て、聡子は自分の言いたいことを言えるようになり、友だち関係や父親や母親との関係もよくなっていきました。ミステリー的に徐々に明らかになる謎があったり、予想外の真相が出現したり、面白い展開でした。
 人が言いたいことを言えない息苦しさは、子供も大人も誰もが理解できることと思います。僕は、恩師や会社の尊敬する先輩方から「あなたはもっと言いたいことをはっきり正しいと主張しないとだめだ」と言われた体験があり、大人になっても引きずっていた時期があったと思います。
 言葉を発していくと、いろんなドキドキする体験をしたり、意外な体験をしたりすることによって生活の見え方が劇的に変化します。発言や行動を必要としてくれる人がいるという発見は、心強いものです。