給料泥棒と言われない、言わないために - 『フリーライダー』

フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)

フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)

 『不機嫌な職場』の著者のうち二人による本です。このシリーズはいつも興味をひかれます。
 フリーライダーとは、職場に貢献せずに、給料や地位だけを得ようとする人のことです。職場の人のだめなところを挙げてゆく話は、共感を呼びやすいものなので、噂になりやすいですし、雑誌やネットなどでもしょっちゅう話題になります。しかしながら、それではただのうさばらしになるだけです。だめな人をやっつけるのではなく、解決と予防を目指さないといけません。
 仕事をさぼる人はもちろんフリーライダーであり、〈サボリ系〉とされています。仕事をさぼるけど他の人を攻撃するようなことのないタイプは「アガリ型」と紹介されています。これは、古くからドラマなどでも典型的に描かれてきた給料泥棒タイプです。「アガリ型」の場合は、さぼった人が仕事をしない分だけ、実務的負担として他の人へのしわ寄せになります。一方、実務負担は与えないけれど、社内で新しい取り組みをしようとする人を見つけたら攻撃する「暗黒フォース型」という〈サボリ系〉もいるそうです。
 フリーライダーは単に仕事をさぼる人のことばかりではないそうです。近年、会社のなかに余剰人員を抱える余裕がなく、成果主義が浸透していくなかで増えたのが、成果を横取りする〈略奪系〉のタイプと述べられています。たとえば、他人の成果やアイデアを、自分がやったようにみせかける「成果・アイデア泥棒型」がいると紹介されています。これもフリーライダー以外の人に実務負担が発生します。一方で、自分が仕事をしているようにみせかけるというより、適切な自己評価ができないために、自分は仕事をやっていると頑なに思い込んで、他の人から仕事の内容を批判されたときは攻撃に転じる「クラッシャー型」というタイプの〈略奪系〉もいるとのことです。
 以上のように、サボリ←→略奪 という《系》と 実務負担←→精神的攻撃 という《型》によるマトリックス的な分類が紹介されていました。
 フリーライダーに対処するとき、絶対に気を付けていたい、と思えるフレーズがありました。それは

フリーライダーが会社に悪影響を与えるからと言って、まるで魔女狩りのように彼らを探し出して取り締まるようなことを、私たちは望んでいない…」(P.79)

フリーライダーを悪者にして、いじめたり、罵倒したりすることは簡単です。しかし、人がフリーライダーになるには、それなりに理由があります。(中略)この点を考えないで、単純にフリーライダーを悪人と決めつけることはやってはいけないことだと私たちは考えています。」(P.79)

 僕が聞いた話で、「クラッシャー型」の人について思い当たることがあります。「あの人は仕事をよくやっている」と言われていた人がいたのですが、どうも様子がおかしいそうです。その人の周りでは大幅に仕事が遅れたり残業が増えたりしています。詳しく聞くと、その人に仕事の内容の評価を伝えた場合には「泣いてわめく」とか「あの人が傷つく」いうことがおこるそうです。その後、業務の減少を機会に、教育の導入などを受け入れさせるまで、かなりの反発をしてきたそうです。
 この本のフレーズで、「誰もがフリーライダーになる可能性がある」(P.78)にも共感します。自分の成果を適切に主張することは、僕は大切だと思っていますし、クラッシャーが泣いてわめいたとしても、組織の目標のためならば必ず修正したくなります。そんな僕の性格は、他の人から見て〈略奪系〉のいずれかに思われる危険があるのかもしれません。だから、自分の成果を判断してもらうために、仕事の記録やライフログについて、定められた業務日報以外に、エクセルのガントチャートをより自作したりする工夫をしてきました。また、なるべく気づいたことを話す機会をつくるようにして、他人からのフィードバックができるようにしたいと考えてきました。
 教育を受けさせて行動を変えることも、暗黒面を倒そうとすることも、誰かをいじめるためにすることではなく、お互いが安心して仕事に取り組むためにすることです。勇気を持って、仲間を信頼して行動していきたいものです。