職場のタコツボから抜け出す
- 作者: 高橋克徳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/17
- メディア: 新書
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このような本にも関わらず、各種ブログに感想が多く書き込まれ、それが著者の高橋克徳さんに伝わっていたそうです。その一例を紹介。
社長が、出社したら、自分の机の上にこの本のコピーがおいてあったそうです。社長が、誰がこれを置いたんだと社内中に聞きに回ったところ、ある若手社員が「自分です。うちの会社の現状と同じことが書いてあります。ぜひ、読んでください」と社長に強い決意の表情で話しかけてきたそうです。(P.5 はじめに)
このエピソードは、一般的に考えてかなり失礼です。でも、そこまでやりたい気持ちは僕にもわかります。自分の人生、家族の人生、仲間の人生、それらが職場の不機嫌のために駄目になりそうなときは、勇気を出して動かないといけません。それを実行するための内容が、続編である『職場は感情で変わる (講談社現代新書)』です。
職場感情の分析、マネジメント
活性
ギスギス | イキイキ
不快−−−−−−−−−快
冷え冷え | あたたか
沈静
不機嫌な職場の改善にあたり、まず職場にみられる感情をアンケートを用いて分析し、職場感情マップと名付けられたマトリックスに落とし込みます(上記図は僕が勝手に簡略化した部分が多く、本当はもう少し複雑です)。”快×活性”がイキイキ感情。”快×沈静”があたたか感情。”不快×活性”がギスギス感情。”不快×沈静”が冷え冷え感情と分類されます。このマップを用いた分析が、「第一章 組織にも感情がある」です。
「快」の側にある感情は、必ずしもよいことばかりではありません。一見あたたかな雰囲気であっても、お互いが仕事に関心をもたず、ぬるま湯のように馴れ合った状態になることもあります。
「第三章 組織感情をマネジメントする」では、ぬるま湯状態について、以下のような記述があります。
誰かがやってくれる、このままでもいいという感情が支配的になり、誰も自分の業務範囲を超えた仕事に手を出さなくなってしまう。(P.90 第三章 組織感情をマネジメントする)
これは大変問題と感じます。ある担当者が、業務が下手で効率が悪いにも関わらず、同じ仕事を継続していることがあります。特別に専門的な技能を要する仕事でないにも関わらず、業務内容を知っているのがその人しかいないという理由だけで、他の人が手伝ったり引き継いだりできないため、効率が悪くとも身動きができない。こうした業務のタコツボ化ということは『不機嫌な職場』のときによく登場していました。
そこに、主体的に関わりチャレンジしてゆく意欲を引き出していかねばなりません。(P.90 第三章 組織感情をマネジメントする)
それが組織の「成熟期」におけるマネジメント方法だと第三章では述べられています。以降、「第四章 組織感情を引き出し、共有する方法」「第五章 よい職場、良い会社をつくろう」と続いていきます。
そもそも感情って何?(第二章)
本書で異色なのが、「第二章 そもそも感情って何?」です。内容は人の感情がどう生まれているかの科学的な分析です。最初は、ビジネスの観点とはかけ離れており、蛇足かもしれないと感じました。
しかしながら、他の章の記述を、単にビジネス上のテクニックとして理解するよりも、感情の科学的な分析について踏まえておく方が、より深く理解できるのかもしれません。実行したいことがビジネスであっても、他の分野の観点が役立つ場面があるのだと思います。