講演しない建築家による講演


 汚いスケッチですが、東京の葛西臨海公園。広々とした敷地。東京湾と一帯となったランドスケープ

 内部スケッチ。

 山形県酒田市にある土門拳記念館。汚いスケッチですが、幾何学的な四角い建物が池に映る様子。
 以上、学生時代のクロッキー帳。建築設計課題に取り組む一環で、雑誌みながら事例研究として適当に書きなぐったものの一部。へたくそで汚いのですが、なつかしい思いがします。いろいろ書いていたなかで、当時のスケッチに登場する建築は、建築家谷口吉生氏の設計によるものが多い。
 先日、金沢市で行われた建築家谷口吉生氏の講演会に行ってきました。
 まず登場したのは、山出保市長によるご挨拶。金沢市には谷口吉生氏の父親、谷口吉郎*1氏の設計による建築が多いということ。室生犀星鈴木大拙のエピソードを交えて、金沢の歴史に親しみを持てるようなお話でした。ここまで約20分。
 谷口先生登場ですが、最初に言われたのは普段講演などはあまりされないとのことでした。最初のお話は、子供の頃に金沢に疎開した頃の級友の話から始まり、建築家になるまでのいきさつでした。父親が著名な建築家で、当初は建築では父に勝てないという思いから、機械工学を専攻して造船所に就職が決まっていたそうです。しかし、父親の友人である建築家、清家清氏から建築は面白いよと言われて、その後ハーバード大学で建築を学んだそうです。
 その後、スライドと共に建築作品の紹介がありました。金沢市*2玉川図書館では、いかに内部と外部の関係をもたせるか考えたとのこと。素材、比例、光ということを常に意識しているそうです。中庭に向かうガラス面に構造体の柱が出てきて内部と外部の関係が途切れるようなことがないよう、向かい側の建物の梁を伸ばして鉛直荷重を支えるという工夫がありました。
 以降、一環して建築のかたちをつくるという、ごく一般的な意味での建築設計作業のなかで考えた話が続きました。世の中にはいろいろなタイプの人がいて、テレビや本に登場する建築家の方には、都市のあり方とか、国家戦略との、建築をとりまく周辺の話を好む人もいます。谷口先生のお話は、それと違って純粋に建築のことを考えてきた方という印象でした。どれも興味深くて集中して聞いていましたが、聞いていた人のなかには単調すぎると感じた人もいたようです。寝ている人とかw。
 社会の状況についていろいろ語る建築家の人も、僕は大好きです。一方で谷口先生のような生き方、ひいては建築設計への取り組み方というのもあるのだと思いました。

誤記訂正および追記

 申し訳ありません。訂正します。

*1:谷口鉄郎⇒谷口吉郎 11/2

*2:金沢市立図書館は数箇所ありますが玉川図書館 11/2