人のもつDNA、人そのもの、その差異

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 いろんな場面でDNAが絡む小説でした。分類するならミステリー小説でしょうか。人を人として成り立たせているものは何か、それについて考えさせられる内容です。
 生物とDNAの関係について、会社と社員について例えた場面が印象的でした。食品会社の優秀な社員を根こそぎ引き抜いたとして、社員だけで新しく食品会社の業務ができるようになるわけではない、という例え。同様に、社員をDNAに、会社の設備を生物の本体と考えれば、DNAの中身だけで人間が成立できないという説明です。主人公が働くDNA分析会社の社長が話した内容です。
 一般的に会社というのは、営業網や物流網や生産工場にある設備などを、会社の持ち物として保有することができます。それらを活用することによって、利益を生み出すというビジネスモデルです。したがって、従業員個人の力で利益を生み出せる構造にはなっていないため、会社は従業員を支配することができる。転勤やリストラなど。
 ここで思いついたことがあります。個人がもつ知的な能力、専門知識や業務処理能力それ自体によって、利益を生み出している企業があるとします。その企業は、特別に高価な設備や広い営業網、そういったものをもたないとします。その場合、会社が従業員に対して、支配的に振る舞うことが可能でしょうか。
 などと、考えてしまいました。小説の内容と、あまり関係ない話ですみません。