自分本位では耐えられない―『脳と気持ちの整理術』『脳が冴える15の習慣』

脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める (生活人新書)

脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める (生活人新書)

 私は、外来を訪れる患者さんと接していて、むしろ人並み以上に仕事や勉強がよくでき、向上心も高い人ほど、そういう悪い流れにもはまりやすいと感じています。(『脳と気持ちの整理術』P.5)

 これは確かにありますし、自分自身もそういう状態になったことがあります。僕が目撃して記録してきたことは、ほんの一部の事例にすぎないので、世の中全般にそれがあてはまるのか確信は持っていませんでしたが、多数の患者と接する立場の人による意見を読むことで、納得できました。

 私たちは、ある程度の年齢・地位になると、自分本位に生き様と思えばいくらでもそうできるようになりますが、そういう生き方は、脳にとって決して楽ではありません。
 エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』という本の中に、「自由を担うには重すぎる」という意味の言葉が出てきますが、これはまさに至言です。人間の脳は、選択肢が無限にあるような状態に耐えられず、思考停止に向かっていくものだと思います。(『脳と気持ちの整理術』P.54)

 だから「誰かのため」になることを考えることが大事と述べられています。権限が拡大したとき、一方的に人を従わせようとする自分本位で感情的な行動は、一時的には快感を得られるとしても、その欲望に終わりが見いだせずに、無限の苦しみの発端になることもあるのでしょう。そこで、例えば仲間を教育して導くなど、目標をはっきりさせるとすれば、思いを表現することやアイデアを実行することができて好循環になっていくのだと考えました。
 誰かのためになることを意識して、整理術をより意識的に実行していこうと改めて思いました。いま自分の周りのものや考えがあまり整理されてない状況があり、少々ストレスになっているからです。

 その状況がまったく変わっていかないとき、業界に関わっている人たちは、問題に興味をもてなくなっていくはずです。煩わしいとは思いながらも、その問題を「変わらない風景」のようにみなすようになってゆく。
 ところが、その業界に外部から優秀な人が入ってきて、「これは問題だ」と気づき、少しだけ状況を変えてみせたりする。そうすると、その変化に反応して、みんなの脳が問題に注目するようになる。(『脳と気持ちの整理術』P.90)

 状況がなかなか変わらないとき、少しでも変化があると楽になります。僕はいままで、ビジネス向けの整理術的な本は何冊か読んできましたので、この本の内容も類書で見たものが多かったです。こうした本を何冊も読むことに疑問を抱いたこともありましたが、医者にしてもビジネスマンにしても学者にしてもそれぞれ違った視点があります。今回この本を読みたくなった理由は、そんな少しの変化を求めていたからです。これを機会にいい方向へ繋げていきたいです。

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)

 内容は似ていますが、『脳と気持ちの整理術』に比べると、シンプルでコンパクトな「習慣」を連ねる形式が目立ちます。自分が実行すべきことの手がかりすらわからない場合は、こちらのほうが参考になるかもしれません。『脳と気持ちの整理術』の方は、ひとつひとつ思索を掘り下げている点が微妙な差異です。
 二冊の表現や形式を比べて考えると、いまの自分はシンプルに伝えて実行してみることがうまくできていない気がしました。状況がなかなか好転しないとき、小さいながらも変化を起こすためには、シンプルに伝わる形でアイデアを表現してみることも有効ではないか、という気づきがありました。