『すぐに実行できるのに誰も教えてくれなかった考える力をつくるノート』

すぐに実行できるのに誰も教えてくれなかった考える力をつくるノート (KEIO MCC Intelligence Series)

すぐに実行できるのに誰も教えてくれなかった考える力をつくるノート (KEIO MCC Intelligence Series)

 慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)*1の「夕学50講」をまとめた本で、著者それぞれの個性や体験が興味深いです。複数の人のメッセージの間に、似た内容を発見できる箇所もあります。

不確実な未来

 不確実性という言葉や考え方は、本のなかで複数の方が使っていました。

 「先が読めない未来」に飛び込むと、ひらめきや創造性が生まれます。(P.029:茂木健一郎脳科学者])
 …このCMには裏のコンセプトがありました。それは「明日が来るかどうかなんてわからないんだ」というメッセージです。(P.059:箭内道彦[クリエイティブ・ディレクター])
 ここに、不確実性の世界におけるライフハックの可能性があります。その可能性には、2つの側面があります(P.200:小山龍介[新規事業プロデューサー])

 同じ仕事を続けているつもりでも、社会状況が変わってしまったり、異業種が新たな競争相手になるなど、不確実な世界の変化による影響は避けられません。そんな状況に出くわしたときでも、前向きに取り組むための考えとして、僕はそれぞれ読みました。
 たとえ市場が縮小するなど厳しい現実があったとしても、単に縮小したりコストダウンをするだけで昔のやり方を継続するだけでなく、ひらめきや創造性を発揮して新たなチャンスを切り開ける場合あります。不確実性にはそういう一面もあり、新たなアイデアの投入はいつも考えていたいものです。

工夫の共有がもたらす連帯感

 この本はタイトル通り、すぐに実行できる内容も多いです。たとえば以下にあることは、僕が自然と実行していたことに似ていたので、効果があると実感していたことです。こうしたちょっとした工夫も「考える力」のひとつだと思います。

 ちょっとした「自分ルール」を設定するだけで、365日仕事の生産性が上がる 1.ケータイにペン型のストラップをつける 2.色別に書類整理する 3.ペン立てを机に固定する(P.193:小山龍介[新規事業プロデューサー])

 ペンのついたケータイや、色付クリアファイルや書類ケースは、かつて僕と一緒に仕事をしていた人たちにとって、おなじみの風景だったと思います。僕と同様に整理を工夫していた人は、整理ができないときと比べて生産性が向上したはずです。
 僕が工夫をした体験を知って、同様の工夫に取り組んでいた同僚に対しては、ある種の連帯感を感じます。こうして本のなかで同様の工夫を知ったときにも、ちょっと心強く感じました。人はお互いに共有できる体験を発見し合うことで、孤独に生きているわけではないということを実感し、気分が明るくなるのかもしれません。だから、こうした工夫は複数の仲間同士で取り組むことでより効果が上がると思います。

こころの病

 近年、こころの病に悩む人も増えているそうです。「考える」ことや「人の体験を知る」ことは、こころの病に対する対策としても大切かもしれません。

 ウツ病は気分(感情)障害なので、感情がその人を支配しています。知性や理性で物事を考えるのではなく「泣いた」「笑った」という感情を重視してしまうのです。(P.230:香山リカ精神科医])
 「自分の症状を理解してくれる人がいる」「同じように頑張って解決してきた先輩がいる」と知ることができます。他の人の体験から、不安をコントロールするコツを学んでいくのです。(P.233:香山リカ精神科医])

 たとえ病というほどでなくても、私たちはそれぞれ、それなりの悩みを抱えながら生きており、それを和らげたいと感じているはずです。ですから、9人の方々がそれぞれの体験を記したこの本は、仕事に役立つテクニックや考え方としてだけでなく、こころの安定としても有意義であり、行動する活力を得られるものでした。これを参考に、考える力を発揮して日々元気に過ごしていきたいものです。

*1:慶應丸の内シティキャンパス:慶應義塾の社会人教育機関 http://www.keiomcc.com/