ネット礼讃に対するアンチテーゼの本

他人を許せないサル―IT世間につながれた現代人 (ブルーバックス)

他人を許せないサル―IT世間につながれた現代人 (ブルーバックス)

 本に書かれていることは、ネットが普及した社会に対する警鐘でした。ネットの状況は移り変わりが早くて、4年前の本でも不安がありましたが、これは十分現在に通じる内容でした。

 僕の身の回りの年配の人たちも、それぞれ現代社会でそれなりの悩みを抱えながら、生活しています。年配の人が、ネットやPC操作によって得られるメリットから遠ざかってしまっているとしたら、その悩みを理解するため、その心配が何なのか考えてみたいと思って読んだ本です。

 余計なお世話かもしれませんが、少なくとも毎日PCに向きあって仕事をしている場合には、そこから遠ざかることは仕事の進行の全てが適切な方向から遠ざかってしまう可能性もあります。

 人は同じものを見ていても、良いものとして捉えたり、悪いものとして捉えたりする場合があります。僕としては、「これが正しいんだ」と無批判に信じ込んで声高に主張するより、悪い面も冷静に受け止めて、考えをより確かなものにする方がよいのではないかと、つねづね思っています。

 この本には、日本人論的なことが多く書かれています。阿部謹也の『「世間」とは何か』*1などが引用されており、この日本的な〈世間〉と〈IT〉の普及とが合わさって生まれる状況に対する考えが、率直に書かれています。

 日本人は人との〈ふれあい〉を重視します。ITは人とのつながりをより容易にします。そこから導き出されるのは、〈ふれあい〉が多くなりすぎてパンクしてしまう場合もあるのではないかという視点だと考えました。

 ITによって、人のさまざまなふるまいが、どこにでもすぐに伝わる可能性があります。それには、もちろん良い面がたくさんあると考えます。情緒的なパンクがあり得ることもきちんと理解して、きちんと対処することによって、その良い面をより活用していきたいです。