ツイッターノミクス−人に親切にしよう−

ツイッターノミクス TwitterNomics

ツイッターノミクス TwitterNomics

 こちらは、menmi_gさんのブログ(link:ツイッターノミクス TwitterNomics – Making the blog.)と本棚(link:http://www.bossabooks.jp/cafe/review.html?id=1982&asin=4163724001)を見て選んだ一冊。

ごく簡単に言うと、ウッフィーはごく普通の〈親切〉や〈礼儀〉に根ざすもの

 『ビジネス・ツイッター』に比べるとコンパクトな本ですが、なかなかのボリュームで285ページあります。ツイッター事例研究については、その分厚さから『ビジネス・ツイッター』に軍配が上がりますが、こちらは著者の考える〈ウッフィー〉という考え方がユニークであり、ツイッターSNS等のウェブ2.0をそれに基づいて分析し、利用法を提案しているところが見どころです。
 〈ウィフィー〉とは、現代のウェブ上における信頼、と考えていいと思います。〈ウッフィー〉は、ウェブに関する専門知識や技術を必要とするものではなく、本質的には実に素朴な〈親切〉や〈礼儀〉のことだと思いました。〈ウッフィー〉よりも、通常言われているビジネスマナーや「空気読め」的なコミュニュケーションの方が、よっぽど複雑でわかりにくいです。
 〈ウィフィー〉の一例でいちばんわかりやすいものは、著者のタラ・ハントさんが美容院に行くとき、髪型の写真やそのとき思ったことをツイッターに投稿していること。「これから美容院に行ってきまーす。(P.32)」という何気ない一言を投稿しているそうです。これにより、ツイッターで写真を見た人から髪型に関するアドバイスをもらったり、いろいろな反応があります。タラ・ハントさんは、新しい髪型の写真を披露するのも好きそうです。ごく普通の女性らしい反応でイメージがしやすいですね。これによって、センスのよい美容師を探している近所の人もよい情報が得られ、美容師さんは指名が増えて満足します。
 このように、ささいな日常の出来事が、ウェブを通した〈ウッフィー〉のやりとりによって、ちょっとよい出来事に変化しました。

人として誠実であること

 企業としての活動や、個人が仕事を得るなどの事例がたくさん紹介されているのですが、本質的には美容院での一例と同じ、と言ったら飛躍しすぎでしょうか。ビジネスにおいても、何気なく面白いと思ったことをウェブ上に投げかけたり親切な言葉をかけたりすることが、仕事に反映されて広まってゆくという出来事が確かに起きていると考えます。
 僕が思うに、ウェブ2.0が普及する以前において、大企業の偉い人は親切なふるまいをしてなくても、大企業で偉い地位にあるという理由だけで人から注目されて信頼を得ることができたと思います(極端なことを言えば、ですけど)。しかしながら、現代では企業が不誠実で親切でない行動をして、ツイッターSNS等からユーザーに伝われば企業はすぐに〈ウッフィー〉を減らしてしまう―信頼を失う―そんな事例の紹介もありました。信頼を失う場合のスピードが加速しています。
 人はそもそも完璧な行動ばかりできるわけではないので、失敗をしてしまったり個人攻撃を受けたりすることも、十分にあり得ることです。そんな状況でも、人として適切な対応をすることで対処できるという著者の考えも書かれていました。だから、心配しすぎなくてもよいのだと考えます。
 ウェブのことが気になって本を読めば読むほど、人として誠実な行動が大切だと思えてきます。つまるところ、人に親切にしようということです。素朴すぎる感想ですが、それに尽きます。『ツイッターノミクス』は、そんな素朴なことばかり書いてある本でなく、事例や技術的なこともたくさん書かれているのですが、一番印象的だったのはそこでした。
 人に親切にする〈ウッフィー〉を行う理由は、他の人からよい情報や利益を得る〈手段〉と考えるより、人としての尊厳を尊重する〈目的〉そのものと考えると自律的な行動となり、より〈ウッフィー〉を受け入れて実践しやすいのではないでしょうか。*1*2

*1:最後の文は、さっき見たNHK教育の『ハーバード白熱教室』の影響で、思いついたことを後で付け足しました。 はじめて見ましたが、とてもいい番組です。これに関連したブログは明日夕方以降に書きたいと思っています。

*2:link:http://www.nhk.or.jp/harvard/lecture/guide_100509.html