みくみくにしてあげる♪ 熱死

富山大学芸術文化学部卒業制作展GEIBUN 1行ってきました。

iPhoneアプリセカイカメラをつくったという、赤松正行さんによるトークショーを聞いてきました。

赤松さんのメディアや人に対する考え方、普段あまり知らない分野のもので、興味深かったです。

「リアル」に関する考え方について-みくみくにしてあげる♪

 「リアル」に関する話の導入として、初音ミクの動画が紹介されました。モーションキャプチャの元になった女の子との比較なのですが、本物の女の子の方がコピーのような気がしてしまうということ。たしかに、そんな気もします。
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 ちなみにトークとは関係ないのですが、西部警察の動画探していたときにはこんなのも見つけました。たしかに、初音ミクは合成音声ソフトであると同時に面白いキャラクターであり、人気ありますね。
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 人が面白さを感じるものの実体について冷静に考えてみると、それがCGのキャラや合成音声等の「リアル」でないものだったりする。それがまた面白いのではないか、ということだと理解しました。

 以前、こんなブログを書きました⇒『イギリス、ロックギター、世紀、山口、江戸時代、明治時代、現代 - FDmountwill_millsの日記』。音楽に関して、ウェブやコンピュータ技術によるツールのおかげで、それまでになかった表現や、発信方法が可能です。

 赤松さんが長年手がけたメディアアートの世界も、そんなツールをうまく活用した表現でした。iPhoneのおかげで電源コードや、通信環境の整備などを気にしない表現が可能で便利であり、まるでギター1本だけ持ってきてストリートで演奏するような感じで、メディアアートがつくれるとのことでした。「リアル」を表現できるツールには、いろいろな選択肢があって便利であり、様々な可能性がイメージできそうです。

エントロピー増大熱死という未来

 赤松さんが危惧することは、物理学などでいうエントロピー増大による熱死。ひらたくいうと、複雑な動きをするものが全体に均質に広がって、全体的にみると何も新しい動きが起こらない状態です。情報量の増大がおこるグローバル世界で、そんなムードも確かに感じられます

 アーティストとは、「先を見る人」であり、「炭鉱のカナリア」として危険なものを察知する役割も背負っている、とのことでした。

 僕の考えとして、アーティストによる表現は、普通に生活しているだけでは直接見ることのできない世界を「リアル」に感じさせる面があると、僕は考えています。思えば、ルネッサンスの宗教画にしても、できた当初は中世以前にはない未来の表現。モネ等の印象派も、交通手段が発達しはじめた時代において、各地の自然を観察するという行為がより多く行われるようになる、という未来の表現でした。

 現代を、情報量の増加によるエントロピー増大の時代と捉えた場合、どんなアートの表現になるか考えてみると、セカイカメラというアプリは的確な方向性を指しているのかもしれません。何もかもがグーグルで検索できて膨大な情報が的確に得られるとして、その膨大な情報のなかでは、「自分」という存在を示すものは一体何なのだろうと感じてしまいます。

 どんな時代であっても、どんな便利なツールが存在していても、「自分」に存在価値がなくなりそう、という現実は厳しいものだと思います。セカイカメラエアタグをつけるという行為には、「自分」が考えたことを「リアル」に可視化することに意味がある。と感じました。

 また、セカイカメラのプラットフォームであるAPP STOREについての話がありました。アップル社が売上の3割を利用料として徴収するということは、一見ぼったくっているように思えますが、90カ国に対して行うビジネスとしては、破格の安さではないか。本を書いて売ったら1割しか著者に入らないし、CDなら95%がアーティスト以外の人がもっていってしまう。アーティストが表現を行い、作品を売って収入を得る場のひとつになる可能性があるとのことでした。

 全体を通して感じたことは、赤松さんのメディアアートアプリ開発には、根底には人に対する慈愛があるのではないか、ということです。人が「リアル」に「自分」の想いを表現できる社会でありたいという考えだと、理解し共感しました。