落ち着いて会話してから論点思考しよう

彼氏が喧嘩をするとホワイトボードに.. : 恋愛・結婚・離婚 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 彼氏が喧嘩をするとホワイトボードに.. : 恋愛・結婚・離婚 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 はてブ人気エントリで面白いと感じた記事です。先月半ばごろですから、ちょっと古いですかね。
 これについて書こうと思って下書き保存したあと、すっかり時間経ってしまいました。その間、いろいろコレクションした問題解決本読み返したり、新規購入したり。新規購入した本は、前回紹介した『自分の小さな「箱」から脱出する方法』。
 ちなみに、上記記事で登場する、お互いの対立する欲求を書いてスタートするやり方は、『ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス』に登場するクラウドが元ネタだと思います。こうして、さっと思い出す僕も、ちょっと嫌味な問題解決マニアかもしれません(笑)
 ここで登場する彼氏は、悪い人でも“箱”に入っている人でもなくて、むしろすごく優しい人のように思います。彼女の問題解決のため、全力で考えている様子が頭に浮かびました。気になるのは、彼女は問題解決をしてほしいのか、彼女の言葉を額面どおり受け取るだけで、彼女の気持ちに踏み込んでいないのではないか、ということです。
 先日紹介した『未来思考 10年先を読む「統計力」』にはこんな言葉がありました。

 私たちは、まるで初めから問題が決まっているような気分になっていますが、ここでちょっと立ち止まって、「この問題は、本当に問題なのか?」ということを疑ってみてもよいのでは、と思います。(P.273)

 この彼氏は、彼女にとっての本当の問題は何か、という問いかけが必要かもしれません。彼女には、話をゆっくりと聞いてもらいたいとか、仕事のことを処理するような話の聞き方をしてほしくない、という欲求があるかもしれません。

問題設定の技術 THE ART OF FOCUSING ON THE CENTRAL ISSUE

論点思考

論点思考

 世間では問題解決の重要性が繰り返し説かれ、そのためのさまざまな手法を解説した本が書店に並んでいる。Amazon.co.jpで「問題解決」と検索すると1000冊以上の和書がリストアップされる。それほど問題解決のニーズが高いという証しだろう。
 だが実際には、その前に重要なことがある。問題を解き始める前に、問題のように見えるものから、真の問題を発見すること、解くべき問題を決めることだ。(P.20)

 確かにたくさんありますね。おかげでまた買ってしまいました(笑)
 こうして書籍購入インプットばかりが増えている状況を問題解決せねば。いやまて、それはそもそも解くべき問題なのだろうか。などとも考えてしまいます。
 “論点思考”について様々な角度から語られますが、教科書的な印象ではありません。きちんとした解説書ではあるのですが、話しかけるような感触があるのがこの本の特徴。

 上司からいわれたとおりの仕事をやったのに、それを提出するとなぜかあまり評価されなかったという経験があるのではないだろうか。これは論点がずれているせいだ。一方で、上司からいわれたとおりのことをやっていないのに、なぜか上司の満足度が高い、一見要領がいいだけに見える人間が、実は論点をきちんと押さえているのだ。(P.38)

 この部分、僕には論点をわかってくれる上司でよかったなという思い出があって、ちょっと感傷的になってしまいました。こうして、いろいろなイメージが沸いてくる場面がたくさんあります。
 たぶん著者が“質問”を重視するというタイプであるがゆえに、“会話”に近い感触を抱くのかもしれません。読む人に対し、落ち着いて考えさせるスペースを与えてくれる感じがします。

 私なら、「寿司ですね?」と聞いて、「寿司ではない」といったら「天ぷらですね?」「天ぷらじゃない」「そばですね?」「そうだ、そばだ」といったら「そば」と、そういう決め方をする。
 「おいしいものを食わせろ」というタイプの依頼をされた場合には、自分から相手に問いを投げて、相手が自社の状況や自身の考えを明確に把握するのを助け、論点を設定する。(P.110)

 専門用語でいうと“プローピング”だそうです。こういうやりとりなら、落ち着いて進行できそう。
 問題解決本を読みなれた人にはおなじみの“構造化”のための図式、フレームワーク的手法が登場するのは、その後です。本の半分を過ぎてようやく“ツリー”などの図式が登場するのですが、衝撃的な発言がありました。

 だが、私はこうした手法はほとんど使わない。年のためにBCGのシニアコンサルタントたちにインタビューしたところ、やはりそれらの手法を使っている人はいなかった。(P.141)

 BCG流のアプローチは、まずこれが問題ではないかという点に当たりをつけることから始める。次にそれについて経営者の話を聞いたり、現場を見たり、あるいは自分の経験を蓄積してあるデータベースと照らし合わせることで検証する。そして最後に念のために、間違いがないか全体像で確認する。ここに論点思考の極意がある。(P.160)

 念のために補足しておくと、こう述べつつも“イシュー・ツリー”については詳しく解説が載っています。でも、活用するのはあくまで最後の念のためということらしいです。
 ここで、冒頭の彼氏について戻って考えると、彼氏は質問や会話といった“プローピング”段階が弱いのかもしれません。ホワイトボードに図を書くというのは、最後のフィニッシュホールドとしては有効なのですが、図の前に、まずは落ち着いて会話ですね。
 論点思考について、落ち着いたベテランの語り口を堪能できる本でした。