全ての学びを悪に転換する、たったひとつの「箱」
- 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2006/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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オバケ級ベストセラー本ですね。ブックオフの2冊1200円セールにて入手しました。ブックオフに行くときは、自分の好みで選ぶ以外に、客観的データを頭にインプットしておくことが多いです。このような断トツ人気本には、それなりの理由があると見込んで、購入することがあります。
この本には、問題解決系のビジネス書でよく見かける、ロジックツリー的な図が登場します。これが、ビジネス書を多読する人にとっては、少し恐ろしいかもしれません。
登場人物バドの子供が泣き出して、妻のナンシーがそれに気づかず寝ていたときのバドの思考
- ナンシーが寝ていられるように起きてデイビッドをあやさなくては。
- 選択
- その感情を尊重する⇒OK
- その感情に背く。
- 自分への裏切り
- わたしは自分をどう見はじめるか。
- 被害者
- 勤勉
- …以下略
- わたしは妻をどう見はじめるか。
- 怠け者
- 思いやりがない
- …以下略
(P.118を参考に作成)
「自分への裏切り」以降もロジックの形としてはできあがっていますね。
したがって、奥さんわるい人、バドはいい人。
めでたしめでたし。。。なわけない。
- 自分への裏切り
- 自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行為を、自分への裏切りと呼ぶ。
- いったん自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。
(P.119)
このロジックツリーや、自分への裏切りの項目は、本の後半にいくにしたがって、どんどん発展していきます。そのドラマチックな経緯が見所です。
人に被害を与えているにも関わらず、自分には問題がないと思っている状態を「箱」と呼んでいます。
「箱」に入った状態では、様々なことがうまくいかなくなります。
これは、論理的思考の技術面を多少かじった人ほど致命的な罠かもしれません。
自分への裏切りの正当化から、「箱」へ至るプロセスは一応論理的ですし、部分的には間違ってませんから。
行動の<良い><悪い>よりも大切なこと
奥さんが子供の世話をせずに寝ていること自体は、少しは悪いことかもしれません。
ですから、それを責めること自体は、それなりに良い行動といえるのかもしれません。
しかし、自分への裏切りを行って、「箱」の中に陥ると、その人自身が苦しんでしまいます。
子供も、奥さんも、嫌な思いをするだけです。
自分を正当化して人を責めるツール
勤勉や思いやりを説く「自己啓発」や、ロジックツリーなどの「問題解決ツール」などは<良い行動>かもしれませんが、「自分への裏切り」以降において、悪用することが可能です。
悪用について書いてあるビジネス書はあまりないので、案外と盲点かもしれません。
「あなたは論理的でない。」「あなたは問題解決できていない。」と人を責めて自分を正当化することは、たしかに可能です。
もちろん、「あなたは「箱」の中に入っているだめなやつだ。」と人を責めることもできます。
人に接する態度
人に接するとき、ソフトな言葉づかいで礼儀正しく接することは<良い行動>かもしれません。
一方、ハードな言葉で率直に言うことは、<悪い行動>として人から責められることもあります。
しかしながら、表面的な行動よりも「箱」のなかで自己欺瞞などに陥っているかどうかの方が、人の反応に違いをもたらします。
人の言葉遣いや行動に対して指摘しようとするとき、「箱」のなかで裏切りや正当化をしていないかどうか、気をつけたいですね。