続・喧嘩上等 効率・スピードの向こう側

link:勝間和代のクロストーク - 毎日新聞

 上記のニュースサイトでも見られる通り、『喧嘩上等!! ビジネスVS精神科 - FDmountwill_millsの日記』に書いた、カツマ・カヤマ論争はまだまだ話題を呼んでいるようです。個人的にも、まだまだ言いたいことあるので、続けて書きます。

出来ない人を引っ張り上げるか、出来る人たちの足を引っ張るか

 仕事が出来る、あるいは出来ない。そういう言葉をひとこと職場で口にしただけで、すごく怒る人がいる場合があります。そういう人のせいで、業務の効率を向上するための話題が、とてもしづらいものになってしまいます。個人的には、こういう人に対して怒りを覚えます。怒る理由としては、業務の効率が悪くなるということもありますが、そもそも人に対する敬意を尊重したいからです。職場でまじめに努力している人や、仲間のことをよく見ている人は、お互い助け合ってもっとあたたかい職場にしたいという想いがあります。その人たちの想いを尊重したいからです。僕は、仕事をよりうまくやるための考えを伝えることで、たくさんの仲間から喜ばれてきました。「もっと話をして欲しい」「正しいことは正しいと言って欲しい」「設計について他の人に教えてやって欲しい」など。どんどんそれを推し進めてきました。
 職場には、どうしても仕事のスキルにおいて、比較的劣る人がいます。仕方のないことです。その人なりに必死に認められたいと願っている場合もあります。最後にとる手段が、業務の効率を向上する話題ができないようにするなどして、他の人たちの足を引っ張ることでした。必死なので、かなり強力に作用します。

勝間:突出した人が出てくると、全員が全員ではありませんが、残りの人たちの中から足を引っ張る人たちが出てきます。どうしてかというと、これが非常に難しい問題で、努力をしてもうまく行かない人は、努力をしてうまくいく人がいると、自分の存在を脅かされてしまうようで、いてもたってもいられなくなってしまうんですよ。(P.101 仕事で幸せは得られるか)

 足を引っ張る人に対しては、香山リカさんの言うような「努力しない」をある程度受け入れるのもひとつの方法かもしれません。足を引っ張っているようでは、沢山の人から嫌われてしまいますので、その人は本当に居場所がなくなってしまいます。僕の体験では、努力ができない人の存在を脅かそうなどと考える人などいません。足を引っ張るというマイナスさえなければ、ですが。
 ただ単に、仲間に敬意を払ってできる範囲で仕事をうまくできるようになって欲しい、というだけのことです。

自分自身のうつ病体験

 実をいうと僕自身も、精神的に病んでしまったことがあります。抗うつ薬だけで運良く治療できたのですが、そのときは精神科という分野にはたいへんお世話になりました。病んでしまった最大のきっかけが、一緒に仕事をしていた人が僕より仕事のスキルが劣ることをすごく気に病んでいて、唐突に職場を去ったという出来事です。もっと伝えられることがあったかもしれないと、いまでも折に触れて思い返します。反省を踏まえ、今の僕なら伝えるべきと思うのは、想像力と考えました。

ジョンレノンのイマジン

 勝間和代さんと香山リカさん、加えて二人が話題にしている<努力に疲れた人>、あるいは<努力できない人>、それら全てに共通していると思えたことが、ひとつあります。自分の目の前に見えているものだけに囚われすぎていないか、ということ。
 勝間和代さんの言葉は”幸せの定義”、”再現性”など、科学的なアプローチで使われるものが目立ちます。実際に目に見える現象を重視する合理的な思考のアプローチと考えます。香山リカさんの場合、”やっぱり最終的には、手で触れる、目に見える、温かい、おいしいといった、リアルなその瞬間の感覚だけが、幸せにつながるのではないでしょうか。(P.54 ふつうの幸せとは何か)”という言葉が印象的でした。<努力することに疲れた人>は、勝間和代さんの著書のなかで、具体的に記述されたものにだけ囚われているから、疲れるのではないでしょうか。<努力しない人>は努力にまつわることについて、目に見える部分だけに囚われているのではないでしょうか。加えて、<足を引っ張る人>は、ポジティブに人の気持ちを想像することができず、自分の存在が脅かされるという幻想に行き着いているのではないでしょうか。
 努力についての喜びや幸せとは、大元は人の想像力の産物だと思うのです。感謝の言葉にしても具体的な感覚は、それを呼び覚ますものにすぎません。それに、どんな分野でも本に書かれた内容を理解して実行するときは、読む人のなかで想像力がはたらいているはずです。意味をイメージできない丸暗記の勉強は、たいていうまくいかないものです。ましてや幸せの実感にはつながりません。
 勝間和代さんの専門である経済分野にしても、「想像力」がすごく必要で、抽象的な思考を多く使うものだと思います。香山リカさんの精神医学も同じ。ですから、本当は想像力の重要性をよくわかっているように思いますが、この対談では「論理的で具体的な話をしなくては」という思いが強すぎるように感じます。
 ここで、ジョンレノンのイマジンを思い出しました。ジョンが本当にそう言ったかどうかわからないのですが、よく覚えていることがあります。「この歌は、想像することはそれ自体が素晴らしいという歌であって、世界平和の歌ではない」ということです。世界平和とセットにしなくても、それ自体が素晴らしいのが、人の想像力であり、未来を切り開く希望だと感じます。