ロックミュージック パラダイムシフト

 先日の紅白歌合戦、ごく一部だけ見ていました。正直言って、全く期待せずに見たのですが、なかなか面白い発見などがありました。そのひとつが、矢沢永吉の横でギターを演奏する山本恭司。
 山本恭司は、ロックバンドBOWWOWのギタリストです。僕がリアルタイムで覚えていることとしては、そんなに多くないです。僕が中学の頃、VOWWOW名として最後の活動を行っていてテレビ番組に出演していたこと。その後解散して、僕が高校の頃にはWILD FLAGという3人組の活動を行っていて、近所のライブハウスにも来ていたことなど覚えています。また、XのHIDEやSIAM SHADEDAITAが、インタビューやラジオ出演時において、尊敬するギタリストの名前に山本恭司の名を挙げていたことも覚えています。
 

GUARANTEE(紙ジャケット仕様)

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 その後、興味深いと思った作品が上記アルバム。中身は聞いていないのですが、曲名があまりにもロックバンドに似合わないということに興味を持ちました。1.さびしい遊戯 2.ハリー&カレン 3.飛び出しナイフ。近年ならば、メリーのような昭和歌謡曲系ロックバンドがいますが、、当時のロックバンドとしては不思議な印象でした。

 BOW WOW(バウワウ)は1975年に芸能プロダクションアルト企画のプロデューサー上野義美が自身の売れるロックバンド構想に合うメンバーを集めて作ったロックバンドである。
wikipedia:BOWWOW

 後年のロックバンドでは、これとは違ってメンバーが個人同士で出会うケースが多いです。同級生つながりであったりメンバー募集や引き抜きなどが多いです。ロックバンドでは、基本的に演奏者個人のアイデアや人脈によって、音楽活動が進行していきます。
 ロック音楽というのは、エレキギターの機能に影響されていると考えます。その特徴は分厚い大音量を安価な設備で出せること。それまでの楽器演奏では、大音量を出すにはオーケストラがずらりと並ぶ必要があり、それをマネジメントするための労力が必要でした。大人数の楽器演奏者がまとまって演奏するには専門の指揮者が必要であり、高度な音楽理論を理解する技術も必要です。それを維持する費用を捻出できるのは、個人では不可能であり、必然的に芸能プロダクションのイニシアチブが強かったのだと考えます。
 ロックバンドは、エレキギターの特性ゆえに、4〜5人程度のグループでも大音量を発生できます。4〜5人の楽器演奏であれば、それをマネジメントするための専門的知識の理解も、オーケストラよりも軽くてすみます。したがって、作曲活動を行うしても大御所作曲家先生から曲を頂いたりする必要はなく、自分たちでほぼ全てのサウンド作ることができます。ロックのアーティストたちは基本的にそのやり方を用いて成功しています。矢沢もサザンもみんなそう。それが音楽業界におけるパラダイムシフト。
 当時は、日本でロック音楽の活動を行う仕組みについて参考にできる成功事例が少なく、試行錯誤していたのだと思います。BOWWOWの場合、歌謡曲作曲家や作詞家へ楽曲を発注した結果が上記アルバム。ロックバンドが活躍する以前の時代において、それは無難に機能するやり方です。しかしながら、歌謡曲作家はロック音楽の経験が少なく、ロックバンドの強みにはまるやり方でもないため、上記アルバムは不評となったのだと考えます。BOWWOWは音楽業界のパラダイムシフトを外してしいました。追記しておくと、これは参考にできる成功事例が少ないゆえの失敗と考えており、BOWWOWのアイデアがまずいと非難したいわけではありません。
 日本のポピュラー音楽とひとくくりにできそうな範囲であっても、その活動のあり方はジャンルによって大きく違っています。紅白で面白いと思ったことは、歌謡曲やロック音楽や、様々な音楽活動のあり方を、一緒に見ることができること。そうして一同に並べてみると、ロックの音楽活動を行う仕組み、あるいは演歌の音楽活動の仕組みがいろいろとイメージできました。
 以上、あくまで思いつきです。パラダイムシフトを見逃して、うまく機能する仕組みから外れたやり方を選択しないよう、気をつけたいとは思いますね。過去の成功事例や異なるジャンルの成功事例が、いつも通用するとは限りません。