『ザ・ゴール』にゴールはない

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

 ビジネス書名著として定番の『ザ・ゴール』。工場生産を扱った内容ですが、幅広い分野で好評となりました。小説形式ビジネス書の先駆けでもあります。TOC(Theoly of Constrations:制約の理論)。僕が特に気に入った場面はラストシーン。以下、ネタバレ注意。
 この本のラストは、TOCでうまくいきましためでたしめでたしハッピー、という終わり方ではありません。新たな問題が見つかって困難に立ち向かう場面で終わっており、そこが好きです。TOCだの何だのといっても、現実の仕事において対処する問題はなくならないと考えるからです。
 『ザ・ゴール2』*1や『クリティカルチェーン*2はきれいすぎるハッピーエンドが不満でした。読み物ストーリーとして完全なハッピーエンドは美しいですが、ビジネス書としてのリアリティがいまいちと感じたので。
ザ・クリスタルボール

ザ・クリスタルボール

 そんな『ザ・ゴール』から派生したシリーズ最新刊。今回のは小売業が題材。水道管破裂により店内倉庫が使用不可になるトラブルをきっかけに、店長らが徐々にTOC的なソリューションに気づいて実行していくというストーリー。
 今回の本には、以前の本と違って図解がほとんどありません。登場人物同士の会話のなかから、何のことを話しているか自分で考える必要があります。そこが思考訓練になると思えました。
 以前のゴールシリーズでは、クライマックス間際で完全なソリューションが見つかるというパターンでしたが、今回の本では前半の方でソリューションのコアな部分は登場します。そこから先は、主に関係者への説得などに費やされます。どんなにいいソリューションがあったとしても、それが簡単に伝わるほど世の中甘くないですね。どんなものであれ、人は環境の変化を嫌うからです。この辺は同シリーズの『ザ・チョイス』*3に詳しく書かれていました。
 粘り強く説得などを行う行動が、本書の読みどころであり、希望を感じさせる部分だと感じます。そして、クライマックスで満足してめでたしという終わり方でなく、常に行動し続ける登場人物で終わるところが気に入りました。