戦国時代の経済活動とビジョン
- 作者: 火坂雅志
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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「利」については、経済活動を通して人々を豊かにしようとする上杉家の取り組みが紹介されます。米や金銀の生産により、上杉家の経済は裕福です。現実の問題として、こうした生産活動なくして人々の暮らしは成り立ちません。財源が確保できなければ、崇高なビジョンも絵に描いた餅です。だから、「義」と「経済」の両立に取り組みます。 関ヶ原以降、上杉家領地の石高がそれまでの4分の1となり、経済的にも政治的にも難しい立場に立たされますが。そこで様々な工夫を行って経済の建て直しを行い、人員整理を行うことなく上杉家を存続させました。今の日本に求められるのも、こうした工夫による建て直しなのだと思います。
「ものにとらわれず、自分の信じた道をゆく。大事なのは、直江家でも、上杉家でもない。天に恥じぬ生き方をすることだ」という言葉がありました。この物語の登場人物に共通するのは、直江兼続も石田三成も上杉景勝にも徳川家康も真田幸村も、自分が理想とするビジョンを実現しようと努力していることです。それぞれの理想はときにすれ違ってしまい、失敗や悲劇を招くこともありますが、天に恥じぬ生き方をしている登場人物たちが互いに影響を及ぼしあった結果、日本全体が平和で安定した社会へと変化し、最終的に全体最適化されていったでしょう。
人々が安心して暮らせる社会を実現するのは、ストレートに実現するものではないのでしょう。ひとりの力で社会を変えることはできなくても、人それぞれが天に恥じぬ生き方をすることによって、社会が良い方向に向かうのだと思います。