戦国時代を通して描かれる現代の社会問題
最近、更新が週刊ペースになりつつありますが、また書きたくなりました。久々に書評です。
- 作者: 火坂雅志
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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>年功序列、縦社会。その崩壊がこのドラマのテーマだと思うんだよね。
>謙信の大活躍が、戦後高度成長やバブル時代に相当する。
>その後、不況で氷河期が訪れてどうなるか。
>実力ある若手と、やや頭の固い年配者との関係。
深読みしすぎかもしれませんが、原作小説を読んでも同様の印象を受けました。ドラマ版の兼続は、上杉謙信に対して従順でしたが、小説版だと謙信にも堂々と自分の意見を述べています。また、兼続の父が家老を辞する場面で”「時代は変わったのだ」”、”「われらは不式庵(謙信)さまという大樹のもとで、ただそのお指図に黙々と従っておればよかった」”と述べるシーンもあります。上からの命令にただ従って動く肉体労働社会から、知識労働社会へ転換している、近年の状況に似ていると感じてしまいました。
織田家の内情について”-自分の部署さえよければいい。という風潮が、軍団内に満ち溢れていた”という記述がありました。そこで、「部署」という言葉に現代的なイメージを深読みしてしまいました。成果主義や能力主義と呼ばれているものが不適切な作用をしてしまい、組織同士で協力することができないという弊害です。武田家や謙信死去後の上杉家においても同様に、組織内が不機嫌な環境になってしまう場面が描かれました。
そこで、景勝と兼続は、「義」という価値観・ビジョンを共有することによって、上杉家を守り抜こうとしていきます。
僕の読み方は、現代社会に結び付けすぎかもしれませんが、現代の問題について考えずにはいられない場面がたくさんありました。