NHK教育知る楽仕事学のすすめ 柳井正 第3回

 知識労働者もドラッカーの重要なキーワードでした。「あなたは考えなくていい立場だ」なんてことを他の人に押し付けるリーダーは、傲慢で無神経に思われるだけでなく、成果から遠ざかっていきます。僕が生活する地方では、人の言うことを大人しくきくだけという姿勢を評価する風潮も、それなりに残っています。評価を受けて出世したり、仕事を得たりしているように見えても、おとなしく言うことを聞くこと以外に業務の経験がないので通用しない。つまらないことしかできずに、いろんな逆風を受けて苦しんでいる。そんな姿を、よく目にしてきたように思います。
 売れている本でもテレビでも、「言うことを聞いてその通りやるだけでよい」なんてことを言う人は少ないですね。でも、地方にはそれがまだ生き残っています。田舎では風景の移りもそう激しくはありません。長時間の残業体質に疲れて、新聞も本もテレビも見ないようなタイプの人は、社会の変化を自分の環境の変化として実感できないのだと思います。自分もじいさんばあさんの世代と同じように生きられるはずだ、という思い込みを捨てることができない。そういう思い込みで生きている人も、悪気はないのだとは思います。僕としては、実際に接することが人に対しては、せめて助けてあげようという気持ちで行動しているつもりです。