石の上にも10年2

天才!  成功する人々の法則

天才! 成功する人々の法則

 感染! アイデアや行動が広がる劇的瞬間 - FDmountwill_millsの日記で紹介した、マルコム・グラッドウェル氏の新刊。翻訳は勝間和代氏。元の題名はoutliers。

outlier
一、中心やその近くの集団から、著しくかけ離れた地点や、まったく異なる分類に属する存在。
二、(統計用語)他の測定値から大きくかけ離れた観察値

  • 第一部 好機

 第一部の第二章にて、「一万時間の法則」ということが紹介されます。個人的に、そのこと自体は”石の上にも10年、を伝える - FDmountwill_millsの日記”で読んだ本などにも紹介されていましたので真新しい感銘は受けませんでした。この本で示された新たな切り口は、生まれた誕生日や年代によって、それをスムーズに獲得できるかが違うということが紹介されています。例えば、ビルゲイツ等の著名な技術者が、コンピュータのアウトライアーでディープスマートを獲得できた理由は、コンピュータ技術の発展とその時点での年齢にも関わっているということです。

  • 第二部 「文化」という名の遺産

 第一部にて、「天才!」の出現は生まれた年代などの影響を受けているということが、様々な角度から述べられました。第二部では、生まれ育った土地の文化にも影響を受けるということ。最も感銘を受けたのは、第7章、飛行機事故についての記述です。韓国は儒教の影響を受けて、目上の人に逆らわないという文化が根付いています。世界各国比較しても、そういう傾向がとても強い国とそうでない国があります。重大な事故が起こす確率が高いのは、目上の人に逆らわない文化の国の人。つまり、機長や管制官といった、目上の存在に対して、副操縦士が気付いた事故の前兆をはっきり伝えることができない。その行き違いがいくつも積み重なることによって、大惨事が起こるということでした。しかしながら、これは克服できるものです。海外から指導者を招き、指導のもとその体質を変えました。以前紹介したディープスマートの本でも「指導のもとの経験が重要」と書かれていましたが、この本のエピソードは、目上の人に逆らわない文化というものすら克服できて、悲劇を回避できるという点で感銘を受けました。
 そして、最後にこの本を書くに至った著者の動機が述べられます。「天才」というものが生まれるまで、時代や文化といったものに影響を受けているということは、その恩恵をうけられずに「天才」になれなかった者もいるわけです。そこで、多くの人に「好機」が訪れる仕組みの社会であれば、社会全体がいままでより豊かになるということです。そうなる可能性があると思うと、わくわくしますね。
 勝間和代さんの解説文で、「今の日本の問題は、この並外れた好機を受けられるチャンスが、若年層になればなるほど失われていることなのである」とあります。それは僕が見てきた社会とはっきり一致します。たとえば、仕事の内容では、言うことをきいてその通りにやるだけの仕事をしている人が、散見されます。そこには知的労働の好機は存在しません。個人的には、プロジェクトをマネジメントする経験や、デザインや理工系の専門教育などを豊富に受けた体験上から、それらの価値ははっきり自覚しています。それが活かせる社会であればいいですね。