業務のイノベーションとサッカー2

プロジェクト・ブック (建築文化シナジー)

プロジェクト・ブック (建築文化シナジー)

 3年前ぐらいに読んだ本。
 建築設計プロジェクトに関する、ケーススタディやコラムなどで構成されている本です。そう紹介してしまうと、ありがちな専門書のような印象を受けるかもしれませんが、中身は型破りです。本の常識的ルールすら無視していて、縦書きと横書きの整理すらされておらず、時には上下まで反転します。
 なかでも、面白いのが住宅設計依頼をうけて案をまとめるまで、その会議の内容をまとめたもの。こう書くといわゆる「業務の議事録」的なイメージが伝わってしまうかもしれませんが、この本におさめられているのは、会議参加メンバーが自由に発言する様子をそのまま記述したものです。行き違いで仕事が進んでおらず「たぶん所長」の人がすごく怒ってしまうという場面も、生々しい会話のままで記述されています。そんな記述が登場する本は、あまりお目にかかったことがありません。
 「たぶん所長」と書いたのも、型破りなこの本の内容を受けてのものです。会議の発言した人の名前は、「所長」などの肩書きでも個人の名前でもなく、サッカーのポジション名で記述されているからです。前述のように怒られたり最終決定を行なったりする場面においては、上下関係が透けて見えますが、自由に意見を出す場面では上下関係の差はあまり感じません。本当にサッカーのようなイメージで、意見を交わしています。IDEOの本*1と似た感銘がありました。雑多なコラムの内容もうなずけるものが多かったです。