会社とは軍隊である

ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方 (光文社知恵の森文庫)

ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方 (光文社知恵の森文庫)

 アメリカでの初版が1977年にもかかわらず、内容のほとんどが色褪せていません。古いと感じた文言は少ないです。そのひとつは、<「お金}に対する感覚を磨く第一歩は、八桁以上計算できる電卓を手に入れることからはじめましょう。> 当時の電卓は、個人で購入するには高価なものだったんでしょうか。
 会社とは軍隊であるという記述があり、僕にとってはしっくりきました。たとえば、トップが「絶対あきらめるな」と言って、現場レベルのエース飛行機パイロットが強敵に立ち向かう。それは仕事の場面とも重なる気がします。フットボールに似ているという記述もうなずけます。個人的な体験として、女性は業務上のやりとりに関して、ボールをパスして回すように、スムーズにやってくれないと感じたことはあります。だから、声をかける機会が男性相手より多くなりがちでした。何度かパスのやりとりをすれば、あとはスムーズでしたね。慣れれば簡単だと思うので、今後もそれを継続して発揮して欲しいです。
 「オフィスの化石」に要注意という記述があります。勤続年数の長い女性で、表面的には上司に愛されているように見えて、あなたは本当にすごいなんてお世辞を言われるタイプですが、現実的には一目置かれることはなく、さっそく早期退職を求められるタイプです。これが、軍隊的な「命令の鎖」を理解できないタイプです。また、会社の中はシンボルでいっぱいという段落も興味深いです。補助的・定型的な仕事をさせられる一般職は制服を着せられ、ラインの仕事である総合職は制服を強制されないという場合、総合職的な立場にもかかわらず制服を着るとキャリアに暗雲がたちこめます。服装については、「成功のためには何を着るべきか」という独立した章で更に詳しく述べられます。あとがきでも、服装について述べています。意外と重要なポイントですね。でも、そんなことは直接教えないのが普通です。直接言われたら、嫌な気持ちになるかもしれません。だから、この本の副題のようになります。
 まえがきで、近年類書*1が多く出版されているという記述があります。その点も、本書の内容が普遍的であることの裏づけです。ただ、これもまえがきに書かれていますが、原理原則というよりは「ひとつの視点」として捉えた方がいいとは思います。たとえば、本のなかで「命令の鎖」の重要性について触れているにもかかわらず、<これは「命令の鎖」に反するかもしれませんが、> という記述が出てくる場面が何度かあります。
 ゲームは実践しないと本当には理解できません。これも本のなかで紹介されていることですが、少しでもイメージを養う手助けとして、軍隊を題材にした小説を読むのもひとつの手段と思います。ただ、本のなかでは1970年代アメリカで有名(と思われる)小説が紹介されていますので、現代の日本においては例えば司馬遼太郎の「坂の上の雲」あたりの方がいいかもしれません。全体を通して、現代日本の社会にそぐわないとと感じた文言は、電卓と小説の2点のみでした。

*1:類書の例に追加するとすれば、訳者のひとり福沢恵子さんと、あとがきを書いた勝間和代さんとの共著「会社でチャンスをつかむ人が実行している本当のルール」というのもあります。ルール - FDmountwill_millsの日記