原研哉氏による無印良品トークイベント採録記事 デザイン

原研哉氏トークイベント採録(1/5) | くらしの良品研究所 | 無印良品 原研哉氏トークイベント採録(1/5) | くらしの良品研究所 | 無印良品 原研哉氏トークイベント採録(1/5) | くらしの良品研究所 | 無印良品 このエントリーをはてなブックマークに追加
 原研哉氏のトークイベント採録を紹介します。はてブ数の伸びがすごいです。
 いままで原研哉氏についてはグラフィックデザインの大御所、ぐらいに考えていたのですが、検索していろいろ見ていると、展示会などいろんなことに関わっておられるようです。自分の不勉強さを恥じるばかりです。デザインの専門書コーナーにいくと、たくさん原研哉氏の本があって、いつも気になっていましたが、今後もっと読んでみたいです。

エンプティ

鳥居もまた空っぽです。入り口であり出口である、ここから出たり入ったりするということを示す空っぽです。この鳥居に導かれて中心部に至るわけです。真ん中の屋代を囲っているのは透垣(すいがい)という透過性のある垣で、何重にも囲われているんです。
この、神様が入っているかもしれないという中心の空っぽに対して、自分の気持ちを投げ入れる。つまりエンプティを介して、神様と交流するわけです。(原研哉氏トークイベント採録 | くらしの良品研究所 | 無印良品 www.muji.net より 以下同)


 「日本」の<エンプティ>についての話から、伊勢神宮の話に発展します。抽象的な<エンプティ>からイメージを想起させる具体例へと、ダイナミックに〓がる話でした。

サッカーで、オランダ出身のオフト監督という人がいます。指導力に定評があった監督ですが、彼が日本に来て最初に徹底させたのは、アイコンタクトです。選手が互いに目と目を見て意思疎通をしてプレーすることだったんです。試合中、「いいパスをするから、50m先に走れ!」なんて言葉で言ってたら、もうのろくさくて、敵陣に切り込めない。見た瞬間にパスを出し、同時にそれを察知して走り出さなくちゃいけない。

ネットの中では、世界中のたくさんの人々が同時に何かを考えているわけです。そこにはまぎれもなく「空気」が発生していて、その意味をいちいち明言化しなくても、コミュニケーションは起こる。これは迷信でもミステリアスでもないわけで、こういうことを今、論理化していく必要があると僕は思うんですね。
こういうコミュニケーションの仕組みを「エンプティネス」と呼んでいます。

 「新しいもの」をつくる、あるいは「新しいことをはじめる」という場面において、単に具体的なプランを提示するだけでは、なかなか人に受け入れてもらえないと感じていました。人はいままでと違うことをするのに、最初はどうしても拒否反応、あるいは嫌な気持ちというものがあります。
 だから、「空気」という形の意思疎通がまず必要なのだと考えます。何かの製品を新しく設計するにしても、業務を効率化するにしても、そういう下地があってのものかなと思いました。その「エンプティネス」からしっかり〓がるからこそ、論理的で具体的な問題解決案、などが機能していきます。

簡素 応仁の乱

世界は「複雑」から進化していますから、インドネシアでも中国でもインドでもフランスでも、簡素・シンプルに極まった様式はないんですね。茶杓だって、中国では水牛の骨を削ったデコラティブなものが高級とされたわけですが、日本では、竹をすっと削っただけのような簡素なものがいいとされたわけです。これはどういうことか。それがおもしろいところですね。なぜなのか、ということです。

そこに、あるときから急に「簡素」ができてきた。なぜかというと、ある時期に革命的なリセットが起こったからなんです。
その大きな要因が「応仁の乱」だったのです。

 日本のデザインが他の国よりも古くから「簡素」なものになっていることについての説明。「応仁の乱」によって当時の日本の中心地である京都が焼けてしまったというお話。
 現代も、低成長という観点から一種の乱世だと考えます。したがって、また新しい考え方やデザインを産み出すことができる、と個人的には考えます。たとえば「自分でつくる住まいのかたち」ということについて原研哉さんはこう述べておられます。

すまい

日本の人口は今後は減っていくわけですから、豊かになった住宅容積をどう再利用していくかを考えればいい。おそらくは、今後、新しい暮らしの空間を自分で主体的に考えられるという手応えが喜びになるような市場が、たぶん育っていくだろうと思います。

 今後、自分の具体的なミッションとして、このような市場における新たな製品あるいはすまい、というものを作っていきたい。改めてそう思いました。

 すごく読みやすい文章なので、なんとなく読むこともできる記事です。しかしながら、自分にとっていろいろな面で深く考える余地がある記事でした。