偽装体質企業

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

 勝間和代さんの「グーグル10倍本」*1にて、個人の生産性を向上させるプロセスとして、「フレームワーク力」*2「ディープスマート力」*3に続いて3番目の段階として、「失敗力」というのが挙げられており、それぞれ参考図書が挙げられていました。この本は失敗力の参考図書です。
 割とベストセラーになった本であり、かなり読みやすい文章です。理工系の設計専門書や、前述の「フレームワーク力」「ディープスマート力」参考図書に比べても、親しみやすい印象があります。しかしながら、やはりこれは前述のプロセスの、3番目に位置づけるのが適当と思われます。なぜなら、本書の中でも繰り返し述べられていることですが、失敗を扱うプロセスは形骸化しやすいからです。これを有効な手段とするには理工系やコンサルティングの専門書で紹介されるような、前述の「フレームワーク力」およびそれをエキスパートとして発揮し伝承する「ディープスマート力」、が土台として必要と感じました。例えば、7章で、QC活動の形骸化について述べられています。「管理のための書類づくりに精を出しているだけで、新しいことに挑戦する意欲をすっかりなくしている姿を多々見かけます」(P.218)という記述は、すごくありがちなことだと思いました。そこをスムーズにクリアーできる仕組みがないと、忙しいだけで形骸化してしまうのですね。
 この本はベストセラーになりましたが、どのような土台をもって読んだかにおいて、個人に反映されるものが大きく変わると思います。この本は読みやすいので、リラックスしてテレビのニュースを見るような態度で、この本を読むことも十分可能です。偽装や事故の問題は、ニュースでもよく取り上げられています。ニュースの場面では、偽装を起こした当事者が非難されています。こういうのものは、設計や生産の当事者である私としては、「いつ、自分が当事者になってもおかしくない」として受け止めるべきと考えています。これは、学生時代の授業で、ニュース映像が資料として出されたときに言われてずっと心に残っていることです。当事者側としては、一般的な視聴者と同じような態度で「なんで、ちゃんとやらないんだ。ばか。」みたいなことを言って、それでおしまいにするわけにはいきません。
 形骸化させないためには、仕事上の技術について精通することが確かに必要です。また、背景にある考えとして、設計や生産の当事者としての責任感が常に必要と感じました。

*1:http://www.bossabooks.jp/cafe/review.html?id=4152&asin=4478002037効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

*2:http://www.bossabooks.jp/cafe/review.html?id=4152&asin=4478490279考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則 など訂正:斉藤嘉則著、株式会社グロービス監修『問題解決プロフェッショナル-思考と技術」』(ダイヤモンド社),斉藤嘉則著『問題解決プロフェッショナル-「構想力と分析力」』(ダイヤモンド社)

*3:http://www.bossabooks.jp/cafe/review.html?id=4152&asin=4270000694「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質